2007年05月11日

●捕らわれたイルカたち

本「イルカが人を癒す」(P53)より
本「イルカが人を癒す」より1993年10月、ドイツのフライブルグで開催されたイルカ・クジラ会議でショッキングなビデオが紹介されたという。

その会議に出席していた、イルカの魅力を世界中にアピールする活動を続けているオランダ在住の日本人、静子・アウェハントさんが教えてくれた。

「最初からすごいビデオが流れたのよ。水族館に芸をするイルカがいるでしょ。ドイツの水族館で起ったことだけどね、ショーが始まるというので、何頭かのイルカがプールに出てきたのね。
そのうちの一頭がね、確かシンドバットという名前だったけど、何と、お腹を上にしたままになっちゃったの。イルカは背中にある噴気穴で息をするでよ。お腹を上にしていると、当然息ができなくなるわけ。そのままだと確実に死んでしまうの。

それで残りのイルカが何とか、そんなことは止めさせようとつついたりするんだけど、その一頭は、もう決死の覚悟というか、完全に自殺ね。息をしようとしないの。

場内は騒然としているわけ。調教師が助けに水の中へ入るんだけど、今度は仲間のイルカたちが人間が近づくのを邪魔するの。

捕らわれのイルカたちが命をかけて抗議したのよね。結局シンドバッドは人間が懸命に心臓マッサージをしたんだけど死んじゃった。

イルカを見せ物にすることは考えなくっちゃいけないわね。ホント、ショックだった」


海洋汚染の問題は、イルカやアザラシの意志とは関係なく死がもたらされたが、この話はまさにイルカが自分の意志で死を選択しているのである。

イルカを殺した壱岐の漁師が語った言葉を思い出してもらいたい。
「イルカの愛情は人間以上ではないかと思います。
網から一頭が逃げ出すでしょう。ところがその一頭は網の中の仲間を思ってですか、いつまでも網のまわりを離れない。」

仲間がモリで刺されたなら、モリのロープを食いちぎろうとするとも言っている。

仲間を思う気持ち、自殺すること、こういったことを見るだけでも、イルカを単に頭がいい動物として見るだけでは、彼らの本質には迫れないことは明らかである。

今、世界の流れは、捕らわれのイルカを解放しようという方向に進んでいる。
『わんぱくフリッパー』というテレビドラマを覚えている方も多いかと思うが、あのフリッパーを訓練した調教師も、今では解放する運動に積極的に協力している。

捕らわれたイルカは、かわいそうに野生の感覚を忘れてしまっている。
いきなり海に帰されても生きていけないのである。
だから、自然で生きるための訓練が必要になってくるわけだ。

映画『グランブルー』のモデルになったジャック・マイヨール氏も、イルカを野生に戻す活動を繰り広げている。

「彼らは、最初は海に出るのを怖がっていた。
私と一緒に海で泳ぐことで、なんとか海に出ることは慣れてきたのですが、深く潜ることにはまだ怯えている。それで、これから深く潜るための練習を一緒にして、最終的には60mの深さまで潜ろうと思ってるんです。彼らが怖がらないように、潜るときは私が先頭になっていき、60mの深さまで潜れたら、帰りは2頭のイルカの背びれに両方の手で捕まって浮上してくる。
彼らに野生本能を取り戻させてあげたいんです。」(週刊現代1993年10月2日号)


驚くべき話である。
海で生まれて海で育ったイルカが海を恐がり、潜ることに怯えを持っているというのだ。
そして、人間に先導してもらって潜っていかなければならないなどということは悲劇以外の何ものでもない。
イルカを捕らえ狭い世界に閉じこめてしまうことがいかに罪深いことなのか、マイヨール氏の話で十分に実感できるのではないだろうか。

自殺してしまうイルカ、
海が怖いイルカ。

これは私たち人間にとっても他人事ではないのである。P55

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